DATE 2008. 8.26 NO .



 足は、動かなかった。
 「やめろ」と叫ぶ事も出来ずに、
 届くわけがない手をのばして、
 その瞬間、僕は無様に突っ立っていただけ。

 のばした手のはるか遠く、追い詰められたキュモールの絶叫は嫌になるほど聞こえた。
 ユーリの声は、全く聞こえない。

 当たり前だ、大声で騒いでどうする。
 それでも。
 何故かユーリがものすごく遠く感じられて、僕は焦った。

 止めなければ。
 親友が道を踏み外そうとしている。
 僕が、止めなければ。

 今ならまだ間に合う。
 まだキュモールの声が聞こえる。
 助けてくれと、叫んでいる――



「お前は今まで、何度その言葉を聞いてきた?」



 唯一聞こえたユーリのその言葉が、僕の頭の中でがんがんと反響して。
 それから、砂の流れる無機質な音だけになる。

 お前は何度救いを求める声を聞いた?
 揺るぎない法秩序を築くんだろう?
 それが、これか?

 明日からこの街は、きっと平和になる。
 心のどこかで、そう、思ったから……?






 ――違う。
 僕が、あの頃の僕達が求めていたのは、そんな「平和」じゃない。

 それに。
 止めなければ。
 ユーリはどんどん進んでいこうとしている。
 僕が、止めなければ。
 光差す場所に引き戻さなければ。



 君がそうやってその手を汚してでも突き進むのなら
 僕は、騎士団の中で、君に背を向けて進もう
 君が振り返る理由になろう

 君のやり方で救えるものもあるかもしれない
 それでも僕は

 譲れないんだ――







≪あとがき≫
 この後、ユーリの背後に現れる感じで。
 フレンは一部なり全部なり、見てたと思うんですよ! で、浜辺の激昂っぷりを支える信念 があれば、ユーリとキュモールが見えた時点で絶対止めに入るんじゃないかと! そんな優雅 に歩いて来ませんって! あのイベントは、ユーリにとってもフレンにとっても、決意の時だ ったんじゃないかと思いました。……とか何とか偉そうに語ってますが、メモでもさんざ書き ましたように、未プレイです。便利な時代になりましたねぇ、ほんとに。





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